二人の戦いの応酬を見、一角が楽しそうだと思いながら地上に降り立つ。僕に気付かず横で腰を抜かしてる男が「な、なんだよ…なんなんだよ、こいつら…」と酷く狼狽えているのが見え、これから世話になる身として説明してあげることにする。


「聞いてなかったのかい、さっきの。彼は更木隊三席、斑目一角。尸魂界最強の十一番隊で二番目に強い男さ」
「あ、あんた、昼間の…!か、加勢しなくていいのかよ!あいつの仲間なんだろ?!」


言うと思った。はあ。


「どうしてわからないかな。見なよ、あの楽しそうな顔。一角は楽しいんだ、久々の強敵との戦いで」


十一番隊の鍛錬でももう一角に敵う奴いないしね。今回阿散井が先遣隊に誘ってくれてよかったんじゃないかな。


「僕たちは加勢しなくちゃいけないんじゃない。加勢しちゃいけないんだ。わかるだろう?」
「い、意味わかんねえよ!…楽しんでる?加勢しちゃいけない?じゃあ、勝てる保証あんのかよ」
「ないよ」
「なんだよそれ?!それでもし、仲間が死んだらどうすんだよ?!」
「そんなの、決まってる」


どうせ死ぬなら派手に喧嘩で。


「本望さ」


戦闘中の機転は一角の方が上手だ。一発入ったな。敵のお情けみたいな仮面の一部が落ちた。顔面に切り傷が入ったらしい。何度かのやりとりののち、やっと敵が斬魄刀を解放した。……ん?


「な、なんだ…そいつは…」


全くだよ。破面の斬魄刀解放ってそんな風になるんだ。刀の面影ないじゃないか。破面が名を名乗り破面にとっての斬魄刀の意味をご丁寧に説明してくれた。どうやら破面の力の核を刀の姿に封じ込めたもので、斬魄刀の解放は力の解放を意味するらしい。ということはこれが本当の姿というわけだ。ふうん、なるほどね。
霊圧が増大し一撃で一角が吹き飛ばされた。これはもしかするな。懐から伝令神機を取り出した瞬間、「いた!」遠くから声がした。……まさか。


「ゆっみっちっかっさーーーーー」


見上げると空中を一歩一歩大股で駆けてくるがいた。何してるんだあの子。


「んっ?」


案の定足場を崩し真下に落下する。「ぎゃあああああああああ」叫びながら僕のすぐ隣に派手に落ちた。この子、自分が霊圧で足場作るの下手なのまだ理解してないのか。再三忠告したはずなんだけど。「え、大丈夫なんスか」「大丈夫だよ」茶髪の男の心配も余所にガバッと起き上がり、僕を睨みつける。


「今確実に受け止める余裕あったでしょ!」
「うるさい。何しに来たの」
「くっそー。…阿散井副隊長に加勢しに行っていいぞって言われて」
「は?君の加勢なんて必要ないけど」


阿散井は何を考えてるんだ。夕方のときはまるで空気読めなかったのに今更こっちにを寄越す意味がわからない。いいや、おそらく阿散井は何も考えてないのだろう。もしかしたら邪魔だからを来させたのかもしれない。試しに聞いてみると「阿散井副隊長、こっちはいいからって送り出してくれたんですよ」だそうだ。やっぱりね。……はあ、なんか肩の力抜けた。


「で、なんでここに来たの」
「いやあどこで戦闘やってるのかよくわからなかったので、派手な爆発音聞こえたここに。一角さんが戦ってたんですね」
「うん」


どうやらたまたまらしい。なんだ、いい迷惑だ、と悪態をつきながら、内心ではたまたま来たのがここでよかったと思う。
そういえば、と夕方突き放すような言い方をしてしまったことを思い出す。謝るべきか逡巡したものの、向こうが気にしている様子もないのでなかったことにしようと決めた。「ややっ。学校ぶりですね!」「あ、はい…」が未だ道路に腰を抜かしている男に気付き会話をしている間に、先程やろうとしていた技術開発局との通信を始める。


『はい、綾瀬川弓親さま、ご用件をどうぞ』
「敵の破壊能力が予想を超えて増大した。斑目一角の半径三百圏の空間凍結を頼む」
『はい』
「多数の魂魄が巻き込まれる可能性がある。建設物に関しては通常通り出撃料から引いていい。魂魄保護を最優先だ」
『了解しました』
「他の敵に関しても同様の力の増大が予想される。日番谷冬獅郎、松本乱菊、阿散井恋次、朽木ルキア、黒崎一護。全て同様の空間凍結を。それから」


視界の隅でがこちらを見上げる。


「斑目一角の隊葬の用意を」


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