伝令神機で伝えられた破面の動きから、少しでも霊圧のある者にしらみ潰しに接触しようとしているのがわかった。義魂丸を飲んだ瞬間昼のを思い出し、あの子噛んでないだろうなと不安がよぎったが噛んでても知るかと思い直した。現世派遣一日目にして破面と戦り合う機会にテンションの上がった一角の呼び掛けに応じ、敵と接触するため繰り出す。
伝令神機によると阿散井のところにも一体行っているのでおそらくあちらでも戦闘が始まるだろう。阿散井が一人で応戦する可能性の方が高いが、も戦うかもしれない。更木隊六席といっても僕からすれば大して強いわけでもないので、破面の実力が未知数である以上足手まといはすっ込んでいてほしい。朽木は席次がなくても割と強い方なんだけど、それを知らないは自分が先遣隊の中で最弱ということを自覚していないだろう、確実に。


「弓親、行っていいぜ」
「え?」
んとこ。阿散井がいるとはいえ心配だろ」
「べつに」


空中を駆けながら返事をする。「そうか?」強要しないところを見るとどうでもいいらしい。適当に相槌をしておいて、の霊圧が揺れたのを感じ取る。あの子はそれのコントロールが鶏並に下手だから、義骸を脱いだだけでも乱れるのだろう。霊圧が高いわけでもないから周りに影響は与えないが、なんというか、至らなすぎる。美しくない。


「ここらでいいだろ」
「ああ」


目星をつけて道路に降り走ると突然目の前に人影が現れた。
といっても大体察知していたから驚きはしなかったが、でかい図体を見るとこれが破面という奴だろう。すぐに他の場所で霊圧に動きがあったのに加え目の前の破面がそちら側の誰かのことを出来損ないだと言っているところを見ると、死神か一護が破面を倒したようだ。六体中まずは一体か。あとはこいつと阿散井のところと日番谷隊長のところ二体、あと一体はどこへ行ったのだろう。名前もわからない目の前の破面はさっきから僕らは運がないとか転げ回って死ぬしかないとか言っているけれど正直やかましいし顔醜いしで気分が悪い。
とか思っていたら最初の斬撃で一角が吹き飛ばされた。始まったか。言われなくてもこの破面は一角の獲物なので手を出す気はない。今回は傍観に回ろう。
吹き飛ばされた一角を追う。すると自動販売機付近で、人間の男と何か話しているのが見えた。


「おい小僧…うまい話があるんだが、乗るよなあ…?」
「いや、あの、内容に寄りますよね、そういうの…」
「実は俺ら、今晩泊まる宿がねえんだ」


ああ、なるほどね。一角の意図がわかり空中から二人のやりとりを聞いていた。


「そして今、おまえは戦いに巻き込まれてやられそうになっている」
「や、やられそうなのは俺よりもあなた…」
「そこでだ!俺があいつからてめえを助けてやるから、しばらく俺らをてめえの家に住まわせろ」
「え?」
「えじゃねえ!「はい」か「いいえ」かどっちかって聞いてんだァ!!」
「はいいいいい!!!!」


ていうかその男、昼間一護の教室にいた奴じゃない?これも何かの縁ってやつかな。……そういえばはどうなったのだろう。義骸脱いだのを確認して以降向こうに気を回していなかった。いや、本来その必要性が皆無なことは承知している。戦闘部隊の十一番隊でなくたって、自分のことくらい自分でなんとかするのが当たり前だ。だから僕がの霊圧を探ること自体不要。…そうだいらない。やめよう。それより今は一角の戦いに集中していないと。戦況に応じて技術開発局と通信しなければならないのだから、こちらの方が断然重要だ。


「よし、決まりだ。…おい」
「ん?」
「名をまだ聞いてなかったな。デカイの」


一角が破面に名を問うと一度は言おうとしたものの理由をつけて答えるのをやめた。ああ、一角とこの破面は流儀が違う。なら仕方がない。一角が一方的に名を名乗り、戦闘が再開された。


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