わたしたちは一護の家を出て道路に広がった。学校に向かったときみたいに脇に寄らないと車とかアレとかアレに轢かれてしまうのではないだろうか。だってさっきわたしが道路の真ん中を堂々と歩いてたら弓親さんにめっちゃ腕引っ張られて「この馬鹿!そんなとこ歩いてたら轢かれるだろ!」って怒られた、っていうかほんと不意打ちだったから肩脱臼するかと思ったし痛みに悶えながら「ひかれるって…弓親さんがわたしに?」と聞けば「その惹かれるじゃない!車とかに物理的にだよ!」とご丁寧に突っ込まれ、ご丁寧に交通ルールというものを叩き込まれ、端に寄らないと車とかアレとかアレに轢かれると教えられた。ちなみにアレとかアレというのは指差しながら名称を教えてもらったのだけどもう忘れた。


「まあ、とりあえず、あたしは織姫のとこ泊めてもらうわ」
「もらうわって、もう井上に許可とったのかよ」
「とってないけど…あの子は頼めば嫌とは言わないわよ」


そういえばさっきのライオンはコンという名前らしい。可愛いね、と歩み寄ったら全力で逃げられた。そのコンはまた乱菊さんに殴られていた。


「隊長も来ます?」
「行くかボケ」
「来ればいいのに〜楽しいですよ?」
「おまえがな」


乱菊さんと日番谷隊長が背を向け歩き出す。それに続くように、でも二人とは逆方向に一角さんが「俺らも行くぜ」と一護に声を掛けた。


「当てがあんのか」
「あるわけねえだろ。気遣いは無用だ。何よりてめえの世話にはならねえ。自分の寝床ぐらい自分で探すさ」


強がってるのかわからないが取りあえず一角さんに寝泊まりする場所が決まってないのはわかった。当たり前のようにそれについていく弓親さんを追い掛けようと駆け出す。


「あ、じゃあわたしも」
「何言ってんの」


え。
振り返った弓親さんに睨まれた。まるで来るなと言っているようで、咄嗟にその場に立ち止まってしまう。


「勝手についてきておいて、そこまで面倒見れないよ」
「…あ、すいませ…」


怒ってる、のだろうか。とても突き放されたように感じて足は動かせなかった。後ろで一護と阿散井副隊長が身じろぎをしたのがわかった。


「おいおい弓親、いくらなんでも」
「わかったなら今すぐらん…」
「じゃあ俺と浦原さんとこ行くか」


弓親さんと阿散井副隊長の台詞が被った。弓親さんが顔をしかめる。普段ならやーいと茶化すところそれもできず、何故なら阿散井副隊長のお誘いは行き場のなくなった今のわたしにはとても甘美で、縋るように振り返った。「い、いいんですか」ああ、と短く答えた阿散井副隊長はやっぱり旦那にしたい死神ナンバー1だと思う。「行くぞ弓親」後ろで一角さんと弓親さんが歩き出したので二人の背中をじっと見送った。


「さて。俺らも行くぜ」
「恋次はまた居候すんのか?」
「誰がするか、あんなとこ」


え、阿散井副隊長は居候しないのか?じゃあどうするんだろう。よくわからないけどとにかく阿散井副隊長のあとを追おうではないか。後ろでルキアちゃんが見送ってくれてるのがわかる。


「阿散井副隊長」
「あ?なんだよ」
「弓親さんはなんで怒ったんですかね」
「しつこいからじゃねえの?」
「自分いつもあんな感じなんですけど」
「いつも怒ってるじゃねえか」
「でも」


あんなに突き放されたことはない。頭ごなしに怒鳴られるのはいつものことだけど、あんなの初めてだったのだ。
「気にすんな」頭をぐしゃぐしゃやられてなんでか落ち着いた。なんか阿散井副隊長ってお兄さんみたいだ。ルキアちゃんもこんな気持ちなんだろうなあ。


top|6|