霊圧探査って何それおいしいの?ってくらい霊圧探査が苦手である。そりゃあさすがに、虚が出たときのズンッていうのはわかるけど、死神全員ましてや一般人まであるっていうそれを、これは誰々のであれは誰々のだーなんて、そんなのわかるわけないでしょうが。ということでただ今絶賛迷子中である。誰か助けて。

そもそも完全にみんなのあとをついて行ってただけだから目的地もわからない。ぐるぐる回ってるけどもちろんみんなの姿は見えない。しょうがない霊圧探査……うーんかろうじて高い霊圧がこの学校内にあるってことしかわからないや。どうしよう。……人に聞けばいいんじゃん!てか一護!あのオレンジなら学校の有名人に違いない!
そうと決まればと適当に入った教室で、茶髪の男の子と目が合ったので話し掛けてみた。


「すいませんあのー」
「へ?」
「黒崎一護くん知りませんか」
「え、一護?」
「一護ならそこにぶっ倒れてますよ」


茶髪くんの隣にいた紺色の髪の男の子が携帯をいじりながら床を指差す。それを辿った先には「え!一護?!」一護が白目を向いて倒れてるではないか!急いで駆け寄って抱き起こす。


「いいい一護!わああ息してない!どっどうしよう!」
「ほらやっぱり救急車呼んだ方がいいって水色!取り替えしつかないことになるかもだろ?!」
「いやよくない?一護って何回かこういうことあるし。たぶん死んでないんだよこれ」
「いや死んでますって!」


うそやだ一護死んじゃうとかやだありえない悲しすぎるわたし一護結構すきだったからさあ最初こそ旅禍や!ぜってえ旅禍や!ってはしゃいでたけどルキアちゃん助けてくれたし怪我治ったあとは十一番隊の鍛練場で相手してくれたし超いい人だものやだやだ一護もっとお話したい手合わせもしてほしいよこれが永遠の別れなんてやだよもう会えないなんてやだよあれでも尸魂界で会える?あれそしたら代行とかじゃなくて晴れて本物の死神?あれそれいいんじゃね?一護ずっとこっちいられるとかよくね?いい!よし決まりこれから尸魂界帰って一護さが「!」「ぐえっ!」突然背後から襟を引っ張られ尻餅をついた。


「やっと見つけた!どこ行ってたんだよ!」
「あっ弓親さん一護が!死んでたんですけどどうしましょう!」
「バカ!魂魄抜かれてるだけだろそれもわからないの?!」
「えええそうなの?!死んでないの?!ちょっと喜ぶべきなのか悲しむべきなのかわからない!」
「ほらそんなのほっといて行くよ!」
「はい!あっ茶髪くんと紺髪くんありがとう!一護死んでないって!」
「あ、そうなんスか…」
「さようならー」
「ばいばーい!」


弓親さんにずるずる引きずられながら手を振って教室をあとにする。手首をこれでもかってくらい握られて、弓親さんはわたしの左手を壊死させる気なんだろうなと思った。何はともあれ、一護は無事だったしわたしも迎えが来てよかった。


「これからどこ行くんですか?」
「一護の家に先回りする。まだ説明終わってないから」
「ああ。それにしてもあれ、一応は死体なんですよね」
「死後硬直とかはならないけどね。というか死んでたら因果の鎖が見えてるはずだよ」
「あ、そっか!」
「どんだけ取り乱してたの」


だってねえ弓親さん、一護がほんとの死神になったら嬉しいじゃありませんか。即刻隊長昇進できちゃうよ三でも五でも九でも選び放題だようっひょー!いいなあ一護の下に就ける吉良副隊長とか雛森副隊長とか檜佐木副隊長いいなあ。わたしは更木隊長で満足だけど。あ、そうだまだ言ってなかった。


「弓親さん」
「なに」
「迎えに来てくれてありがとうございました」


お礼をすると弓親さんはキッとわたしを睨んで、それから諦めたように「いいよ、べつに」と言った。一角さんが言ってた保護者もあながち間違いじゃないなあ。


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