「副隊長ー!」


副隊長を探し求め十一番隊舎内を歩き回るも姿を現わす気配は一向にない。もうすぐで始まっちゃうけど置いてっていいのかなーだめだよね絶対。一瞬諦めかけたのを振り払いもう一度叫ぶ。


「副隊長ー!」
「副隊長なら執務室にいるよ」


ん?振り返るとそこにはいつも通りテンション低めの弓親さんがいた。クールぶってるのか知らないけど彼のオフ顔は大抵そんな感じである。血の気の多い十一番隊の連中と比べると異質だから浮いて見える。おっしゃ行くぜオラーー!っていう弓親さんはあんまり見たことがない。まあそんなことはどうでもいいのだけど。それより散々探した副隊長が執務室にいるだと。


「あの人が事務仕事なんて珍しいですね」
「仕事してるわけないだろ。お昼寝だよ」
「あー。弓親さんはどこか行くんですか?」
「休憩にね」


ハンッさぼりかよ。と鼻で笑えばペシンと頭を叩かれる。


「いってえ…まじありえない綾瀬川しね」
「そんなに痛くないだろ」
「…もー弓親さんと話してると会合に遅刻するわ!」
「ああ、何かと思ったら女性死神協会か」


さすがは察しのいい死神ナンバーワン(わたし調べ)。しかしそれのためでもなきゃ副隊長単品で探すことなんてないという。副隊長のお守りはできるだけ勘弁したい。「じゃあ頑張ってね」その苦労をわかっている弓親さんはひらりと手を振り去っていく。ジト目で見送り、それからわたしも執務室へ駆けて行った。

無事ソファでお昼寝している副隊長を捕獲し、なんとか起こすことにも成功し手をつないで女性死神協会の会合場所に赴いた。朽木邸はいつ来ても大きいなあとのんきに歩いてネムさんの用意した隠し扉から侵入する。本当にネムさんはこういった改造をいつ施しているのだろう?


「あれ、どうしたんですか?」


今日の議題は完成したプール開きの予定だった。朽木邸の中庭に作ったそれをみんなで見ようと言っていたのだ。なのでそこへ行ってみたのだが、ネムさん、虎徹副隊長、清音さん、伊勢副隊長、乱菊さんの五人が中庭へと続く戸口からこそこそ隠れて中庭を覗き込んでいるではないか。わたしたちに気が付いた乱菊さんに手招きされ、腰を屈めて外を見ると、丁度プールを目の前にした朽木隊長の千本桜が散っているところだった。


「ああー…」
「あーあ、やっぱり見つかっちゃったかー」
「びゃっくんのケチー!」


轟く爆発音にがっくりと肩を落とす。どうやらプールはおあずけらしい。





同じく朽木邸にある女性死神協会の部屋で話し合うわたしたち。副隊長(ここでは会長だ)は誰にもらったのかお椀山盛りの金平糖を一人でぱくぱく食べている。


「あんなに堂々と庭の真ん中にプールを作るからバレるんですよ!」


伊勢副会長が拳を作りながらプールの反省点を挙げる。今日の議題はプール崩壊についてに変更になったようだ。なんだかんだみんな席次が高いので礼儀をわきまえわたしも正座をしているのだけれど、すでに足が痺れてきた。「申し訳ありません。次は、対朽木隊長用の迎撃装置を完備するように致します」「そういう問題じゃない!」ネムさんの改善策に伊勢副会長がツッコむ。湯のみからお茶こぼれてますよ。


「でも、ほんとにこれからどうしましょうか…」
「新しく別の場所に造るとか」
「と言ってもねえ〜」


んー…、と虎徹副隊長、清音さん、乱菊さんが考え込む。残念ながら、瀞霊廷にそんな都合のいい空き地はないのだ。行き詰まった。ここでプールの夢は潰えるのか、と思いきや、「お話はよくわかりました」「わっ?!」突然、満面の笑みを浮かべた卯ノ花理事長が現れた。すげえ、全然気配感じなかったよ。


「何かいいお考えがあるのですか?」
「はい。折角ですから、みなさんで現世の海に、慰安旅行に行きましょう」


おお、と口を開く。プールも楽しみだったけど、現世への慰安旅行の方が断然わくわくするぞ。「やったーー!海だー!」会長が大はしゃぎした流れで、それじゃあ現世に水着を買いに行こうと乱菊さんが提案するのだった。


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