「弓親さん弓親さん!」
?」
「奇遇ですね!どうしたんですかこんなところで」


この間日番谷隊長に告げ口したのは事実に基づいたものだった。ぶらぶら商店街を歩いていると弓親さんが見えたので声をかけたらいつもどおり澄ました顔で振り返って、一緒にぶらぶらする流れになった。つまりこの人も大概暇なのである。「べつに。暇だったから」ほらね。


「ですよねーまじ暇ですよねーもっかい破面来ねーかなー!」
「前回は君戦ってないじゃないか」
「弓親さんもじゃないっすか。次こそ一人はやっつけたい!」
「舐めない方がいいと思うけど」
「ですよねー」


何たってあの一護が痛い目見たのだからね。わかってるわかってる。前も言ったけど一護はルキアちゃんを助けるため瀞霊廷に乗り込んで護廷十三隊に喧嘩を売りなおかつしっかりルキアちゃんを助けたという武勇伝の持ち主である。わたしといえばルキアちゃんの処刑日がどんどん早まるのが変だなーと思いつつそんなこともあるかとあんまり頓着しないでのうのうと遊び呆けててほんと馬鹿だな!と昔の自分を激しく叱咤したい気持ちになることしばしば、しかもいざ旅禍を潰せと言われてひゃっはー!とそこら辺を団子食いながら練り歩いてたのに結局最後まで誰とも遭遇できなかったという残念な感じで終わった。一護と遭遇した弓親さんたちと一緒に行動してればよかった。
いやあそれにしても、まさか藍染隊長が黒幕だったなんて全然考えもしなかったなあ。あの人優しかったし雛森さんのすきな人だったから絶対いい人だと思ってたのになあ。市丸隊長はまあそれっぽかったけど。でも乱菊さんの大切な人らしいから市丸隊長もいい人なんじゃないかなーわたしが知らないだけでいい人なんじゃないかなーとか思ってたのに。東仙隊長は完全にわたしの認識の範疇を越えたお方だったので何も申し上げられません。わたし狛村隊長のこと犬の顔してるって知ってからすきになったからさあ、そのあとで「狛村隊長は東仙隊長と友人だったんだ」って檜佐木副隊長に教えてもらって初めてあの人について考えてみたら何も思い出せなかったよ。檜佐木副隊長目の前に乾いた笑いが漏れてしまったよ。そんなこと今はどうでもいいのだけど。


「結局破面って何人いるんですかね」
「さあね」
「百人とか?」
「そのくらいで仮定しておけば何にも負けないんじゃない」
「今思ったんですけどわたしって六席じゃないですか」
「今更?」
「雑魚ですよね」
「うん」
「まあ弓親さんは一個高いだけですけど」


殴られた。


「…なんでこうもいちいち殴るんですかね」
「言ってもわからないからだろ」
「確かに」
「認めるなよ」


でも次破面来ちゃったら今度こそ現世生活終わっちゃうかもだから嫌だなあ。現世に飽きて尸魂界が恋しくなったら来てくれないかな破面さん。


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