乱菊さんに渡された制服とやらに身を包むとなんでかしっくり来たので、もしかしたらわたしは生前学生を謳歌していたのかもしれない、と思った。ちらりと見た空座第一高校の生徒さんに倣ってワイシャツを一度スカートに入れて少し出す。ルキアちゃんはここが長かったからか手慣れていて、襟を立ててリボンを付け、また襟を直すという動作をそつなくこなしていた。しかしどうやら生前のわたしの制服はリボンじゃなかったらしくうまくできなくて、うんうん唸りながら頑張ってみたけれど結局見兼ねた乱菊さんに付けてもらった。
何にも説明されてないから経緯はわかんないけど、これから一護に会いに行くらしい。どうしてわざわざ制服にならなきゃいけないのか謎だったけど口に出して聞いて答えを貰っても納得できるかわからないし、そんなこと理解するより初めて見る現世が面白くてわきゃわきゃしながら周りをきょろきょろしてたら弓親さんに叩かれた。


「痛い!」
「よそ見するなよはぐれたらどうするの」
「はぐれないし。子供じゃないんですから」


叩かれたところを優しく労るように自分で撫でると弓親さんはまるで汚いものでも見るかのような目つきでわたしを見下した。うぜえ。
一護の高校に着いた途端ルキアちゃんは一人別ルートで行ってしまい、チビとハゲと美人と入れ墨と睫毛とわたしという(自分を除いて)カオスなメンツ六人でぞろぞろ校内を歩いていると男女が二人廊下で何やら話してる光景が目に入って発するオーラが険悪であれってもしかして修羅場?と思い旺盛なわたしの好奇心が足を動かした。尸魂界でも度々そのような現場があると聞くが目の当たりにしたのはこれが初めてだ。いやはや、何事も百聞は一見に如かずである。
窓の外を眺めながら歩いて二人の会話を聞くとやはり予想は間違ってなく、近付くにつれて大きくなっていく声はお互い怒気を含んでいるようだった。喧嘩の原因はもう話し終えてしまったようでよくわからなかったけど傍から聞いてる分には滑稽なやり取りでにやにやしてしまうのを抑えるのに必死だった。
二人がいる廊下を往復し終える間際、「もう別れよう」「ああ」と言う声が聞こえ後ろから男の方が通り越していった。おおお破局…!やっぱり百聞は一見に如かず。これは乱菊さんに報告だ、と意気揚々とさっきまでみんなと歩いて来た廊下に出て進行方向を見た。


「……あれ?」


はぐれちゃった。


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