翌日の昼、時間通り公園に集合したわたしたち。今後の対策を練るらしく、一人ベンチに座る日番谷隊長を囲むように立ち並ぶ。阿散井副隊長がいないことに気が付いた彼がさり気なくこっちを見たので、今日は浦原商店でやることがあるので欠席するとのことですと知らせた。同じ家に居候しているので伝言を言付かっていたのだ。もしかして知らないかもと思い阿散井副隊長が浦原さんのところに居候することになったことも伝えると、日番谷隊長はそうか、と呟いて特に追及はしなかった。


「ふうん?なんだかんだ言って、あそこが気に入ってるんじゃないんですか?居候も二度目だから結構慣れてるみたいだし。チャドに修業つけてるって話です」
「案外楽しんでるのかもね」
「破面共の力を考えると、こちらの戦力も多いに越したことはないからな」


乱菊さんから始まり弓親さん日番谷隊長とコメントをしていく。今朝、わたしが起きたときにはすでに茶渡さんはいて、阿散井副隊長も義骸を脱いで準備万端といった風だった。今日の会合を欠席する旨を伝えると地下勉強部屋なる場所に行ってしまったので、あとのことは知らない。ちなみに、わたしも何かお手伝いができないか聞いたら、時間があるときに料理の手伝いをしてくれると嬉しいと鉄裁さんに言われた。もちろん了承したけれどわたしなんぞが鉄裁さんの料理に手出ししていいのだろうか。あくまで時間があるときでいいそうなので、何もなければ早速今夜お手伝いをする予定だ。
何作るのかな、考えていると「で、こっちはどうします?」一角さんが本題を切り出した。


「聞くまでもねえだろ。俺たち自身の力をもっと高めねえと、これからの戦いにも勝てねえ」
「そうですね…イラつくけど、破面たちの強さは本物ですから」
「ハッ。上等じゃねえか。それでこそ楽しい戦いができるってもんだぜ」
「いかにもあんた好みの展開ね」
「まあな。松本、てめえも技磨いとかないと生きて尸魂界に帰れねえぞ」
「わかってるわよ。あっいけないこんな時間!」


時計を見てハッとした乱菊さんは日番谷隊長に街の様子を見てきますと言ってどこかに行ってしまった。見回りなのにめっちゃ楽しそうだった。乱菊さんていつも仕事サボってるイメージがあったけれど実はそうでもないのかな、意欲的だ。

結局そのあとは今後の予定を大まかに決めて解散した。日にちは未定だけれど今度みんなで集まって斬魄刀との対話をするらしい。わたし今まで斬魄刀と意図して対話したことないんだけども大丈夫かな。
解散したあと例の如く弓親さんたちにくっ付いていき、遅いお昼ご飯を食べることになった。日番谷隊長も来ればよかったのに、さっさと帰ってしまったようだ。松野屋という丼もののお店に三人並んで入り、牛丼を注文する。わたしと弓親さんは並盛りで一角さんは大盛りだ。


も弓親ももっと食わねえと強くなんねえぞ」
「一角とは胃の大きさが違うんだよ」


カウンターに並べられた牛丼を自分の元に置き、いただきますと言って割り箸を割った。うまく割れなかった。隣の弓親さんのを見ると綺麗に割れていてなんだこいつと思ったけれどそれよりも奥の一角さんの食べる速さにわたしの目は掃除機の如く吸い寄せられどうでもよくなった。この人と食事を共にすることは何度もあるけれどいつ見ても豪快だなあ。一角さんと結婚なんかした日には常にご飯のことを考えていないといけなさそうだ。ぜってえやだなあ。
それに比べて。弓親さんの方を見る。この人は静かに食べるよなあ。というかあんまり物を食べている印象がない。そりゃあ生きてるわけだから食べるのは当たり前だけど、なんか光合成とかで栄養補給してそう。とか言ったらまた馬鹿にされそう。この人と結婚したら一角さんよりはマシかなあ、……いや、夫なのに姑みたいに口うるさそうだから駄目だな。これだから十一番隊はロクな奴がいないとか言われるんだよ、わたしに。


「なんだよ、全然食ってねえじゃねーか。腹減ってねえのか?」
「一角さんの食べっぷり見てたらこっちがお腹一杯になってしまって」
「はあ?何言ってんだ。おい、牛丼の並追加」
「まだ食べるの?」
「こんなんじゃ腹膨れねーよ」


おげえ、信じられん。大盛り食ってまだ食えるとかそっちのが意味わかんねえよ。弓親さんに「も早く食べちゃいな」と言われたのでもう一角さんを見るのはやめて牛丼と向き合うことにした。
すると、突然、伝令神機の電子音が鳴り響いた。ピッピッピッというつまらない音は隣の弓親さんからだ。ポケットから出したそれを一角さんが「何かあったのか?」と覗き込む。それに倣ってわたしも覗き込んだ。「…ていうか君たち、なんで伝令神機持ち歩いてないの」弓親さんの口角が引きつるけれど無視をする。鳴った電子音は一台分だけだった。きっと今頃浦原商店と啓吾くん家で元気よく鳴ってるだろう。誰か消しといてくれないかなー。


「北十一ブロックに虚ですか」
「ただの虚だろ?だったら俺たちがわざわざ行く必要はねえな」
「そうだね。近くには乱菊さんがいるようだし」
「じゃ、あいつに任しとけ」


おお、乱菊さんちょうど見回りしに行ってたし、バッチグーなタイミングだ。頼んます。「しっかしやかましいなさっきから」「妙だね。何の音だろ」さっきからどこからか聞こえてくる、電子音とは違う柔らかくて高い音に二人が訝しむ。確かにやかましいけれどそんなことより目の前の牛丼が減らない。


top|15|