とは言ったけど不動くんはあれから何かにつけて一緒に帰ってくれた。ほとんどが部活がない日にわたしが誘って渋々といった感じで乗ってくれるのに加えて、テスト期間も言えば毎日帰ってくれた。全部わたしが言い出しっぺかというとそうでもなく、ときどき佐久間くんと源田くんと話すことがあるって三人で帰る話になったとき(佐久間くんが)わたしを誘ってくれることがあった。話したいことがあるのに邪魔じゃないのかなと思ったけどいざ帰ってみると邪魔以前に不動くんに存在を認識されないレベルだったからよしとしよう。ときどき源田くんが話を振ってくれてそこから話題が広がっていくのでまったく彼の優しさには涙が出る。そのとき不動くんとは直接話せなくても、最終的に二人になってそこで話せるのが嬉しかったから喜んでついて行き続けたのだけど。そういえば知らない間に不動くんとクラスやサッカー部の溝が埋まっていて彼は周りともそれなりにしゃべるようになっていた。それがわたしの日々の頑張りの成果だとしたら、嬉しいなあと思う。何をしたかは想像に難くないであろう。

そうやって毎日不動くんとの友情を育んでいたらあっと言う間に三年生になった。クラス替えがないのでおなじみのメンバーが変わらずいて嬉しい。三年生にもなるとわたしと不動くんの家がお隣だということは周知の事実となり、不動くんにわたしが話し掛ける流れを見てもみんな気にしなくなった、らしい。佐久間くんが言ってた。


「この光景にも慣れてきたんだろ」
「ふうん」
の友人も見つけるには不動探した方が早いみたいなこと言ってたぞ」
「あ、確かにあながち間違いじゃないよねー不動くん」
「同意求めんな」


給食の時間は食堂で自由席なので大抵不動くんの隣に座る。わたしが不動くんの隣に座る頻度より少ないけど佐久間くんも不動くんの前に座る。そして佐久間くんの隣には100パーセント源田くんがいるわけだ。こうして見るとまるでわたしに女友達がいないんじゃないかと疑われかねないが、ちゃんといるので心配しないでいただきたい。五人グループに入っているけどわたしがどれだけ不動くんと仲良くなりたいのかを理解してくれているいい人たちなので、間違っても嫌味とか言われてない自信がある。わたしが不動くんとこ行って来ると言えば「行って来い行って来い」と呆れながら送り出してくれるし、「なんか我が子を見送ってる気分だわ」とか十五歳ながらにして子持ち発言をしてたりする。そしてときどき一緒にご飯を食べたり休み時間おしゃべりしたりするとわたしと不動くんのことを聞いてくれる、とてもいいお友達なのである。


「もう少しで大会だな」
「あー、な」
「終わったら引退?」
「ああ」
「じゃあそしたら遊ぼうよ不動くん!」
「…おまえその前に頑張れとか言えねーわけ?」
「あ、…頑張れ」
「ハイハイ」


しまった部活なくなって放課後ずっと暇な不動くん想像して一人で嬉しくなってしまった。不謹慎だったか。苦笑いの佐久間くんと源田くんにも頑張れと言ったら源田くんに「不動とは本当に仲いいな」と言われた。源田くんはきっとわたしがそれを言われたらものすごく嬉しいことを知らないで言ってるんだろう。ありがとう!といつもどおりに返せば隣で不動くんが仲良くねえよと突っ込むのもいつも通りだ。


「まあ、終わってから考えてやるよ」


食器を片して教室まで戻る道のりで、そう不動くんに言われた。瞬時にさっき話した遊ぼうということについてだというのがわかって、目を輝かせながらうん!と頷いた。


「でも夏休みはもう受験勉強やらなきゃだろうな」
「あー…ね」


もう六月に入っていた。不動くんが高校についてどれだけ考えているかはしらないけど、このままずっと、不動くんとはさよならしたくないと思うよ。

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