2 「え、えっとー…」 「わたし達が言ったのにするより、が考えた物をあげた方がいいんじゃない?」 「そうかなあ?」 二人とは二年生の頃から知り合いで、今年同じクラスになってからは一番仲良くしてる友達だ。二人とも大人っぽくてしっかりしてる、頼りになる女の子だ。まだ三年生になって一月も経ってないけど、二人と同じクラスになれてよかったと思ってるよ。 摩子ちゃんの助言についてちょっと考えてみる。といっても、荒船くんが喜びそうなものに見当すらつかないのだけど。帽子?お好み焼き?最近アクション映画の話よく聞く気がするから……いやだからって何をあげろと。難しいな。ううむと考え込んでしまう。そりゃー倫ちゃんも摩子ちゃんも女の子だし、男の子の欲しいものとか難しいよね。だとしたら……。考えて、一番に思い浮かんだ当てにブンブンと首を振る。 「影浦くんに聞いたら?幼なじみなんだし」 「……いやっ」 雅人くんには聞きたくない!口の前で手のひらを重ね言わないのポーズをする。だって雅人くんひどいんだもの、わたしがボーダーに入りたいって言ったらおまえには無理だろって否定するし、ムカついたから絶対受かってやる!って啖呵切って試験受けに行ったら落ちちゃってその報告したらザマーミロとか言うんだよ!信じられない、冷たすぎ!おまえはよくやったよとか慰めてくれてもいいのに!想像できないけど。 「ねえ、だからもっかい受けようと思うんだけどどうかな?!」 雅人くんへの愚痴を次回への鼓舞で締める。「雅人くんギャフンと言わせたい!」じゃないと腹の虫が治まらんと言わんばかりに拳を固く作って意気込むと、倫ちゃんと摩子ちゃんも今度は困ったように眉をハの字にした。 「でもほら、戦闘員には素質とか求められるから」 「そしつ…?」 「うん。だから一回落ちたら難しいんじゃないかな」 二人にそう諭されてしまいたかぶった気持ちはしゅるしゅるとしぼんでいく。拳もいつの間にか解かれていて、膝小僧の上にペタンと置いてしまった。そうか……そうなのかあ…素質が求められるんだ。あの筆記とか体力測定とか面接で、わたしは戦闘員としての素質なしと判断されたんだ。なんだあ、悔しいなあ。 「オペレーターは考えてないの?」 「うん…」 「でも他の隊のサポートもするときあるよ、わたしの隊とも、」 「ううん、いい。雅人くんギャフンと言わせたいだけだったから」 「え、そうなの?」 「あっオペレーター馬鹿にしてるわけじゃないよ!」 「わかってるわよ」 肩をすくめた摩子ちゃんにホッとする。驚いた様子の倫ちゃんと呆れ顔の摩子ちゃんが目配せしたのにはなんとなく気が付きながら、はあと溜め息をついた。元々は、雅人くんが楽しそうにしてるのがうらやましくて入りたかったんだけど、とは悔しいから言わない。 「おいゾエ」 パッと振り向く。呼ばれたわけじゃないのに、聞きなれた声に引き寄せられるみたいに、わたしは教室の入り口に顔を向けた。制服と髪の毛で全身まっくろくろすけみたいな幼なじみが立ってる。雅人くん。 「……」 すぐに目が合う。雅人くんは嫌そうに顔を歪めて逸らしてしまった。なんだよう、悪いのはそっちだぞ。口を尖らせて、北添くんが来ても、若干隠れてしまった雅人くんへ視線を向け続ける。わざとだ。わたしの機嫌はまだ治ってないぞってことをアピールしたかったのだ。 「影浦くんじゃなくてもわかるよ…」 隣に座る倫ちゃんが、わたしの横顔を覗き込んで苦笑いした。言われて気付く。自分はとんでもなくガラの悪い顔をしてたのだ。「うわあ」あからさますぎかーと顔を覆い隠す。恥ずかしい。摩子ちゃんにも笑われてしまい、失礼だぞー!と机をペシンと叩く。もう雅人くんの方は見てなかった。 「ぷっ、ケンカしてるの?」 「知るか。笑うな」 「ごめんごめん、また噛みついたら面白いなー。あのときはほんと…」 「うるせえ!」 だからこのとき、二人がそんな会話をしてたなんて知らなかった。のちに流れるちょっとした噂の元凶である。 |