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久しぶりのお天気で、午後になってもピーカン晴れの空にるんるんの気分で洗濯物を取り込んだ。このあと洗濯物を畳んで箪笥にしまってちょっとお昼寝をして夕飯の準備を始めよう。平和な日だ。
この前撮ってもらった写真は、雑貨屋さんで買った花柄の写真立てに入れて棚に飾った。見る度にやにやしてしまう。にやにやして、お似合いですね、と言われた瞬間を思い出す。そのときサソリはどんなことを思ったんだろう。わたしとおんなじ気持ちだったら嬉しいなあ。
布団は和室にあるけど、お昼寝はもっぱらソファでするわたしはごろりとそこに寝転がった。ひじ掛けにちょうど足の関節が掛かるように調節して、だらんとぶら下げる。途中で窮屈になるからどうせ最後はノーマルな形になるんだけども。あ、今日はカレーにしようと思った。
目を閉じて時計の秒針の音に耳を澄ませていると別にタンタンと階段を下りる音が聞こえた。サソリしかいない。最近よく居間来るなあそんなにインスピが湧かないのか。まあわたしとしては嬉しいけど。起き上がって普通に座る。サソリはこの寝方をするとひじ掛けが潰れるから怒るのだ。ぱっとサソリを見ると、一瞬目が合って、そいですぐに逸らされた。ほんと人と目合わすの苦手だよなあこいつ。


「どうしたの?」
「…ああ、や、なんも…」


本当に馬鹿なわたしは、ここに来て初めてあれ?と思った。何か様子がおかしい。サソリって、こんなに歯切れの悪いしゃべりをする人だっけ。サソリは、もっとすらすら言葉を並べて相手を言いくるめるやつだ。わたしはその光景を何度も見たことがあるし、むしろわたしが言いくるめられたことも何度もある。こいつがこんなに、何かを言い淀んでいるところを、わたしは見たことがなかった。
目をぱちぱちと瞬きして、それから「わたしに何か言いたいことがあるの?」と口がしゃべった。言葉が零れたとも言う。脳みそで考えた台詞だけど、言えと伝令する前に口がしゃべったような感覚。サソリはフローリングの床を見ているだけだ。わたしは彼の口が動くのをじっと待っ、


「おれ、人傀儡になる。最初から考えてた」


息が止まった。