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今日はとてもいい天気だったので起きて朝ごはんを作って洗濯物を干した後、暇になったので読みかけの本を窓に寄り掛かって読んでいた。気付いたら十時半になって、そういえば冷蔵庫の中が寂しくなっていたんだと思ってサソリを呼びに行こうと立ち上がると丁度彼が居間に下りてきたところだった。いつもサソリはご飯を食べるときや寝るときや他最低限の生活行動以外は自分の部屋から出てこないのでわたしは少なからず驚いた。またインスピが沸かなくなって休憩しに来たのだろうか。ときどきそういうときもある。


「どうしたのサソリ」
「日光が強すぎて集中できねえ」
「夜行性だね。あ、わたし今から買い物行きたいんだけど、いい?」
「あーいいぜ」


ということは今日は日没までサソリを独り占めできると言うことだ。にやにやする気持ちを抑え、「じゃあサソリも着替えてね」ぱたぱたと自分の部屋に行った。

見上げると空には雲が一つもなくて太陽がきらきらしていた。ぐうっと背伸びをしたあと、お昼ご飯はたらこスパゲティにしようと思った。


「いい天気だね」
「そうだな」
「サソリって晴れ嫌いだよね」
「べつに嫌いじゃねえよ。くもりのがすきってだけだ」
「わたしもくもりが一番すきだけど、紫外線が強いんだよ」
「どうでもいいだろ」
「わー女子の敵ー」


そんなくだらないことをサソリと話す。時間が無限にあるようだ。なんて平和で幸せなんだろう。もう、抜け忍なんてことも忘れて自由に、隠れるなんてしないでサソリと二人で生きてみたい。ずうっと一緒に隣で寄り添って、ときどき喧嘩して仲直りしたり、ずっとくだらない話で笑い合っていたいなあ。
ふっと、商店街を眺めていると、古びた外観の写真屋さんを見つけた。あ、あんな店あったんだ。


「ねえサソリ見て」
「…ああ、あんなのあったのか」
「ねえ撮ってもらおうよ」
「はあ?おまえなあ、抜け忍が足跡残すような真似するもんじゃねえぞ」
「いつもそればっかりじゃん。大丈夫だって」
「……」
「ほらほら睨まないで。行こう」
「…ったく」


サソリはわたしに甘いのである。だからわたしが手を引いて、嫌々ながらも写真を撮ってくれるのだ。

パチリ。撮った写真には幸せそうな顔のわたしと相変わらず仏頂面のサソリがいた。写真屋さんは老夫婦で、奥さんの方がわたしにそれを渡したあと、お似合いですねと言った。はっと赤くなる。


「いえいえとんでもないです」
「ふふ、将来いい夫婦になりますね」
「ええっ」


それから写真屋さんを出て、「さあ買い物に行こうではないか」「誰だおまえ」冷たいサソリにむっと頬を膨らませるとサソリはさらっと、わたしの手を取って歩き出した。…え、何だと。


「早く買って帰んぞ」
「えっなっなになに、インスピ沸いたの?」
「…ああ」
「うそつけ」
「…、黙れ」


ねえねえサソリ、君は照れを隠すのも嘘をつくのも下手な、わたしの世界で一番大事な人ですよ。愛してる。