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いつかは聞かれると思っていた。里を抜ける一日前、おれたちは一週間ぶりに顔を合わせた。おれは任務続きで忙しかったし、も怪我人の治療で忙しかった。が中忍に昇格して以降、おれたちが会う機会がめっきり減っていた。一週間ぶり、もちろん事前に何も伝えてないし里を抜けることを考えている素振りも見せていない。それなのにを誘ったんだ。疑問に思わないわけがない。
べつに一人でもよかった。一人じゃ里を抜けれないってわけでもないし、追っ手から逃れるのだってむしろ一人の方が楽だ。それなのにわざわざ荷物を抱えるような、そんなことをわざわざ。そうだから見れば謎だらけだ。おれはこいつに何も言っていない。俯いたに何から話すべきなのかわからない。
初めはに里を抜けることを言って、一人で行くつもりだった。最後にこいつの顔を見て、名残を惜しんだらそれで、おれ一人でどこまでも強くなるつもりだった。強くなれば迎えに行くことだってできると思った。だから里を抜けようと思った日の夜、を待っていた。最後に顔を見て、触れて、別れを告げる。その完璧なプランがを見た瞬間揺らいで、そのまま崩れたのだ。「なんでだと思うよ」言うとが顔を上げた。


「え…わかんない」
「じゃあおまえの都合のいいように取っといていいぜ」
「は?」


そうしておれは苦しくもはぐらかす。なんで誘ったって、答えは至ってシンプルだった。ただそれを言葉にして伝えるにはあまりにもおれは弱くて、臆病だ。むっとしたは口を尖らせて、素早く茶碗にご飯を盛るとすたすたテーブルに運び、突っ立っていたおれの正面に向いて、睨むようにしておれを見上げた。


「わたしサソリのことすきなんだよ」


……これでもかってほど目を見開いた。何を言い出すんだこいつ。心臓がうるさくなっておれは目を逸らした。多分も同時に逸らしたと思う。


「あ、えと、だからね、後悔なんかしてないし里抜けるの誘ってくれて感謝してるしこの逃亡生活だって楽しい、から…だからわたしこのままで何の不自由もなくて」


言いたいことは何となく伝わってくる。でもの慌てる様子があまりにも面白くて、おれはつい吹き出した。「っくく…」「なっ、ここ笑うとこじゃない!」みるみるの顔が赤くなる。決してそれが怒り故ではないことはわかっている。


、顔真っ赤だぜ?」
「は、う、うるさい!大体おまえがおれ死にますみたいなこと言うから」
「死なねえよ。誰が死んでやるか」
「ほ、骨拾えとか」
「もしもの話。まあおれにかかれば99パーセント成功するだろうぜ」


これは少し見栄を張ったかもしれねえな。「ほんと?!」でもがわかりやすく表情をころっと変えて明るい笑顔になったから、成功する確立が99パーセントになってから実行に移そうと決心した。いつの間にかもやもやが晴れた気がした。笑みを零す。


「おれが死んだらおまえ悲しむもんなあ」
「へ?」
「誰が誰をすきなんだっけ?」
「あっちょ、おまっ」


さらに赤くなった頬に触れて、軽くつねる。「いひゃい!」痛い、な。まあちゃんとしゃべれなくて当たり前だけど。あーそっか、そうなのか。おまえもおれと同じ気持ちだったんだな。思うとなんか恥ずかしくなったから顔を見られたくなくてを抱きしめてみると「うぎゃ!」とか変な声を出した。すっげえ笑えた。