63 「この死体が入れてあるダンボール箱、角がつぶれて側面も汚れてるだろ?これは適度に死体を転がして死斑が出にくくしてんだよ」 「…あ、あの、コナンくん…?」 怖いのも忘れ呆気にとられて彼の推理を聞いていたわたしはつい声をかけてしまう。コナンくんの淀みない推理、その内容の精度に度肝を抜かれたのだ。詳しいことはもちろんわからないし、そもそも彼の推理が正しいのかもわからない。でも、それが普通の小学生が考えられることじゃないことは、わたしでもわかった。 呼ばれてわたしと目が合うとコナンくんはあからさまにゲッと顔を歪めた。まるでわたしがいることをすっかり忘れてたみたいだ。 「あ、えっと、こういうの前に推理小説で読んだんだ…!」 「そ、そうなんだ…?!すごいねえ…!」 呆気にとられたままそんなことを言うとえへへと苦笑いするコナンくん。遺体を見つけて明らかに動揺してる歩美ちゃんたちと比べると彼の冷静さが際立つ。普段通りの彼が、とても頼もしくも見えた。さっきまでの恐怖は薄れ、目の前の小さな少年に目を奪われる。……なんか、この感覚は、知ってるぞ。その正体に気付くと、「ちょ、ちょっと待って…」クールな哀ちゃんの焦る声が耳に入った。 「つまりさっきの二人にわたしたちが見つかれば…」 「ああ…」 「ぶ、無事じゃ、すまないよね…」 コナンくんに縋るように口にする。すぐに、小学生相手に情けない、と反省した。「そんな…」しかもみんなを怖がらせてしまって罪悪感に襲われる。 「あ、ご、ごめんね…!」 「…さんの言う通りだよ。このままだと僕たち、ここに閉じ込められて殺されちゃう…」 コナンくんの身も蓋もない言葉に眉尻を下げる。そうだ、だってあの人たちはわたしたちを簡単に殺せるだろう。黙ってここにいたら、こんな寒い中にずっと閉じ込められたら、凍死してしまう。寒気はずっと止まらない。 「な、何とかならないんですか?!」 「扉が開いたときにみんなでバーッと外に出るとかよ!」 元太くんの案には哀ちゃんが冷静に否定する。「無理よ…わたしたちが普通の状態ならともかく、このかじかんだ身体で全員素早く逃げ切れるとは思えないもの」確かにそうだ。現時点でわたしの手足の指先には感覚がない。もう三十分以上ここにいるのだ。時間が経てば経つほど、わたしたちは自由に身体を動かせなくなる。不安の空気がわたしたちを取り囲む。ドクドクと気味悪い心音が身体中に響く。 そうだ、安室さんに助けてもらえば!思いついたわたしは哀ちゃんの方を向いた。携帯の入ってるポケットに目を落とした瞬間、コナンくんの声がコンテナに響く。 「大丈夫、方法はあるから…」 ……え? 神妙に声を発した彼に、わたしを含め全員が目を向けた。 「僕らがあの人たちを宅配すればいいんだよ……監獄にね」 小学生とは思えない、自信ありげな彼の表情に不思議と安心感を覚えた。やっぱり勘違いじゃない。コナンくんの醸し出す雰囲気は、どこか安室さんに似てるのだ。 |