このアジトももう見納めだなあと感慨深げに呟いたら隣でデイダラが舌打ちをした。わたしが横目で奴を盗み見ると、眉間に皺を寄せて、アジトをひたすら睨みつけてるデイダラがいた。それでわたしは少しだけ悲しくなる。でも表情は変えない。たとえ目の前に見えるのが、元の姿をまるで残していないぼろぼろのアジトだろうが。こんなにしたのは間違いなくあの真っ赤な髪のあいつしかいないわけで、そんでもってあいつは本当にいないのだ。わたしは瞬きを二回した。立っている水面がふわふわ動いた。わたしのチャクラが乱れてる証拠、だ、けど、わたしは知らない振りをする。

サソリの死んだ場所に来た。デイダラと一緒に。


「こんなもんだろ」


ふん、と鼻を鳴らすデイダラはきっと何もわかっていないのだろう。ただ強がっているだけだ。…誰が?わたしもデイダラも、だ。奥の、壁に張り付けられているあれと、瓦礫の中倒れているあれはどう見てもあいつだった。それでもわたしは瞬きをぱちぱち二回するだけで、感傷に浸る気もさらさら無いのだ。薄情だって、罵ってくれて結構だよ、ばかやろう。


(  サソリ、)


その名前を声に出すのが躊躇われた。目をぎゅっと瞑る。鼻がつんと熱くなった。