まるで、そうたとえば、世の中の綺麗事を全て綺麗さっぱり洗い流して、世の中の汚れた醜いものも全部燃やし尽くして、もう何もないって思わせときながら微かに残ってる、光ってて、さらさらしてる、それ。痛いほど脆くて儚くてそれでいて眩しいもの。こいつの命ってそんな感じ、だったんだ。気付くのが遅かった。


「サソリさん、わたし、目を閉じると見えるんです」
「飛び散った血だとか粉々の骨とか、そういうのが見えるんです。不気味、ですよね」
「でも」


ああちくしょう遠いなおまえ、綺麗すぎたんだ、血とか死を間の当たりにしても尚この世界に在り続けて、悔しいくらい泣いたり嗚咽を漏らしたり、ぼーっとしてると思ったら目を見開いて戦場を必死に記憶しようと、消えていく命を忘れないように、だから、こいつみたいのがたくさんいれば世界は平和なんじゃないかって何度も思った。それでもおまえは一人なんだろ、だからいくなって、言ったろうが。おまえ、いなくなったらこのあとどうなると思ってんだ、なあ、俺を置いて一人で、独りで逝っちまうなんて、そんな勝手なこと許すわけねえだろうが。おまえのすきなみたらしだんご、いっしょに食べに行くって、楽しみにしてたろ、いいのかよ、、「

世界がおまえを無視しようがどうだっていい、少なくとも俺は


、いくな」


なあ、頼むから、どこにもいくな、ましてや一生会うことのないような、そんな場所なんて


「サソリさんは世界が汚れても、たった一人だけ、最後まで綺麗なんですね」


俺じゃない。おまえ、が、綺麗すぎたんだ、だからおまえは最後の最期まで、そんなふうに笑って死ねるんだろ、なあ。