同年代の朽木ルキアはわたしの上司というか先輩に値する人で、ともすればわたしにとって尊敬の念を抱く人物になるのは当然の成り行きだった。わたしとは桁違いのその美貌と実力はさすが四大貴族と言っても過言じゃなかったと思う。彼女とすれ違う度に、まっすぐ前を見つめる視線を目で追ってしまいなびく後ろ髪に見とれてしまってわたしは幾度となく人にぶつかった。藍染隊長は優しく許してくれたけど市丸隊長にぶつかったときはああもう死ぬなと思った。

朽木さんはわたしと同年代でちょっと先輩で同じ十三番隊の隊員だ。けれどもわたしは朽木さんのすべてを尊敬した。存在を知ったのは十三番隊に入ってからだけど、確かにわたしは誰よりも彼女を尊敬していた。海燕副隊長の死があって彼女がどう思ったのかわたしはまだ知れていないのだが、いつか二人きりで話すときがあれば是非聞いてみたかった。屋根の上で一人で寝転がりながらふっと、泣いたのかなと思ったけど彼女は強い人だからきっと泣いてなんかいないんだろうなと決めつけた。わたしは今虚退治が済んだところで後は帰るだけなのだがあまりにも現世の天気がいいものだから少しだけゆっくりしていこうと決めたのだった。誰の家かは知らない屋根でわたしはひなたぼっこをしていた。ずいぶん強い霊力を感知して屋根から道路を覗くと現世では珍しいオレンジ頭の少年がわたしのいる屋根の家へ入ろうとしているところだった。一見不良にしか見えない少年だけど、世の中変わったもんもいるもんだとさして気にも留めずにわたしはそのまま寝てしまった。

わたしは間抜けで無頓着な死神だ。もっと緊張感をもてと浮竹隊長に言われたり清音にはなんだかんだでしぶとく生き残りそうねと笑われたこともある。そんなわたしは強い霊圧を感知しても飛び起きることなくのん気に寝ていることが多い。そしてそれを見つけるのは大抵朽木さん、彼女なのだ。同じ番隊とはいえ朽木ルキアと関わる数少ない機会のため、もしかしたらわたしは寝過ごして彼女が起こしてくれるのを無意識の内に狙っているのかもしれない。


「何をしておるのだ」
「……」
!」
「はいっ?!…は、朽木さん」


気がついたらわたしの隣には朽木さんが立っていて外はもう夜だったため月が彼女を照らしていた。背景に月を置いた朽木さんはますます美人だなあとのん気に感嘆していると目の前の人は深いため息を吐いた。


「まったく貴様という奴は…」
「すみません。どうかしたんですか?」
「虚が近い。わたしが片付けるからは帰っておれ」
「あ、はい」


おとなしくわたしは尸魂界に帰り、彼女の帰りを待った。そういえば隊長に報告していなかったと気付いて急いで報告しに行ったらわたしは浮竹隊長にもため息を吐かれ呆れられた。いい言い訳も思いつかない単純な思考回路の脳味噌はわたしにただひたすら頭を下げろとの命を出すだけだった。ラッキーなことに浮竹隊長は優しいのであまり長い説教は免れることに成功したが心身ともに疲労気味のわたしはふらふらと部屋に戻りながらもやっぱり彼女の心配をしていた。大丈夫だとは思う。たぶんすぐに帰ってくるだろう。きっと帰ってきた彼女はわたしを見て小さくため息を吐いて微笑んでくれるのだろう。わたしはそう信じて疑わずにのうのうと眠りについた。

それからやっと朽木さんが帰ってきたと思ったら、彼女はわたしに顔も見せず牢へ閉じこめられた。処刑宣告されたのはいつだったろうか。