(首すじライン/RYTHEM)


「い、いま時間いい?」


ブレザーの袖を掴んでじっと見つめる。振り返った彼は始めきょとんとしていたけれど、やがて真剣そうな表情で頷いたのだった。


「ええよ」


ああもう、言わなくてもわかってるだろうなあ。じゃあ言わなくていっか、ということにはならない。残念ながら。わたしの六年間をそれでうやむやになんかできない。

でもどうだろう、無理かなあ…。もう逃げまいと思って捕まえといて尻込みするのは、わたしがすきになるずっと前から白石くんが一人キラキラしていたからだ。かっこよくて、しっかりしてて、優しい彼を女の子はほっておかないし、男友達だってたくさんいる。そんな人に告白するとか、ちょっと、ハタから見たら無謀だ。わたしもちょっと前までは、絶対無理だって思ってて(今でも随分思ってるけど)、でも今日を逃したらもう二度と言えない気がして、白石くんの都合も無視して告白するのだ。……ああだめだ、そう思うと絶対無理だって気持ちばっかりになる。


「ご、ごめん、ちょっと待って、」
「はは。ええで」
「、……」


そっと手を離す。……優しいからなあ、きみ。その笑顔でわたしの胸はきゅうっと痛むのだ。ずっとそうだ。すきになってからずっと、きみのせいで心臓が苦しい。きみに握られてるんだと思ったのはこれが初めてじゃない。わたし、白石くんに何度もどきどきして、そのたび言ってしまおうと思うんだけど勇気がなくて飲み込んでた。そういうのをもうやめようと思ったのだ。
俯くと二人分のローファーが見えた。途端、頭に六年間の思い出が蘇ってくる。そうだ、わたし、結構長い間白石くんと一緒にいたの。くだらないことでたくさん笑い合ったし委員会のことで一緒に悩んだりもした。そういう毎日を積み重ねてきた。


「……あの、」
「…ん」


絶対無理だと思ってた、けど、長い間一緒にいてくれたり、今だって言いたいことわかってるのにちゃんと待ってくれたり、そういうの、自信にしちゃだめかな、と、思うわけです。
顔を上げる。まっすぐ見つめる白石くんと目が合う。……背中を押すのもきみだ。


「わたし、白石くんのことが、」


どうしても諦められなかった。だから、震えてるつま先でも、踏み出すよ。