(merry-go-round/ケミストリー)
転生ネタ



家の前まで来ると向き合って立ち止まるのはいつものことだ。タカ丸の家はここの通り道だからいつも彼の方が大きく一歩を踏み出すのだ。背の高い彼を見上げるため顔を上げる。夜風が金色の髪を揺らした。


「それじゃあおやすみ」


そう言ってはにかむタカ丸にくすぐったい気持ちになる。おやすみと同じように返すけれど彼のとはまるで違って聞こえるのはどうしてだろう。タカ丸の声がやたら爽やかなせいだろうか。ときどき抜けているところもあるけれど総じてハイスペックな彼は何をしても様になる、というか自分が何をすると様になるのかわかっているようだった。こういうのをあざといと言うんだろうなあ。


「ぼーっとしてる?」


その声にハッとする。タカ丸が首を傾けわたしを覗き込んでいた。慌てて首を振るとそう?と小さく笑うのでどきどきしてしまう。初めて会ったときからそうだ。タカ丸はずっとこんな調子で、甘い空気を醸すのがうまい気がする。それに見事に引っかかったのがわたしだけれど。


「タカ丸かっこいいから照れるんだよ」
「えっ?!そ、そう?ありがとう」


かーっと赤くなってしまったタカ丸が素であるのはわかる。照れる様子もかっこいいなあと思う。純粋に疑問に思う。こんな人が、どうしてだろう。なんでタカ丸はわたしなんかをすきになったのだろう。
タカ丸とは中学が同じだった立花くんに入学式の日に紹介されて会った。初対面の人相手にそれなりに緊張していたからよく覚えてないけれど、そのときタカ丸は緊張とは別にひどく動揺していた気がする。タカ丸自身人見知りするタイプじゃないので間違ってないだろう。それから連絡先を交換して仲良くし始め、呼び方もタカ丸の要望で早くに名前で統一させられた。思えば彼は最初からわかりやすく積極的だった、気がする。


「とても純粋な疑問なんだけど」
「うん、なに?」
「タカ丸って、なんでわたしをすきになったの?」
「……そんなの、ちゃんだからだよ」


それは理由になってないよ。思ったけれど口にするのははばかられた。彼が苦し紛れに言ったようには見えなかったからだ。穏やかに、とても愛おしそうにわたしを見る彼を追及する気にはとてもじゃないけどなれなかった。


「いつかわかるかも、でもわからなくてもいいよ。俺は君がすきだから」


「それじゃあ今度こそ、おやすみね」手を離す直前、毎回ぎゅうと握り締めるのはタカ丸の癖だろうか。別れを惜しむみたいに、わたしと離れるのが怖いみたいに、彼から何か伝わってきそうなのに、それが何なのか、わたしはまだわからないでいる。