(赤髪の白雪姫/あきづき空太)
王子さまと宮廷薬剤師のラブロマンスなお話です。城には兵士や女中や衛兵などが勤務しています。王子には何人かの側近がいて常に行動を共にしています。ときどき遠征に向かい地方の様子を視察しに行くので城にいつもいるわけではありません。宮廷薬剤師とは城勤務の医者みたいな役職です。(今回、王国ものという点くらいしか設定を活かせておれません)





同期で兵士として王城入りした真子はなかなかに腕の立つ男らしく、近頃では王子の側近の有力候補として名を挙げているらしい。女中と一緒に募集をかけられていた兵士の応募者の中で一人唯一ヘラヘラしていた彼の姿は、緊張で固まり切っていたわたしの目にすら留まった。兵士の試験には実戦も含まれていたから、なんとなく、きっと落ちるだろうなと密かに思ったのだ。そうしたらまさかのトップ通過。昇進組としてエリート街道を突き進むこととなったこと、そして無事女中に採用された自分がまさかそんな彼と親しくするようになるなんて、あのときは思っていなかった。


「側近になるのはやっぱり試験とかあるの?」
「さあ?ちゅーかまだ受けるん決めたわけやないし」
「え?蹴るの?」
「さあ」


わたしの実家は城下町のお茶屋さんで、暇な日が被ったりするとよくここで集まってぐだぐだ話したりする。コーヒーを啜る真子は白けた目で斜め上を見上げた。いつものやる気のない顔だ。同じ兵士のひよ里が蹴り飛ばしたくなるのもわかる気がする。


「もったいない」
「そォか?俺は今のまんまで結構満足しとるからなァ。側近目指してたわけでもないし」
「贅沢だね」
「実力ある奴は辛いのォ」
「うぜー」


側近になるということは王子と一番近しい間柄になると言っても過言ではない。王子が行くところ全てに付き添い、何かあれば彼の盾になるのだろう。危険は付き纏うから、それなりに腕の立つ者でないとならない。選ばれるのは城の兵士たちの中でもほんの、本当にほんの一握りという倍率なのに、真子はそれを簡単に投げ捨てようとしているのだ。きっと面倒くさいとかそういう理由に違いない。側近は単なる兵士と違ってやることがたくさんあるらしいから。


「もったいないなあ。収入とか跳ね上がるっしょ?」
「アラやださんてば!ほんま金にがめついんやから〜」
「…お金は大事だよ」


真子の小芝居にイラっときたので顔を歪めてそう言うとケロリと態度を変えて「せやな」と返された。


「やけどなァ。ええわやっぱ。断ろ」
「うわ、本気か。もう二度とないよこんなの」
「ええよ。側近て王子の遠征とかにも付き合わなアカンのやろ?俺基本城におりたいねん」
「なんで」
「……なんでやろなァ」


いつも通りのやる気のない目がわたしを捉えていた。しかし真意は全く伝わってこないのでオウムみたいに「なんで」と返すしかなかった。呆れた真子にもうええわ、なんてコントの締めみたいに返されても困る。