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力の抜けた手、が、おれのそれからずるりと、落ちた。冷えていく体温、あ、こいつ死んだのか。それを認めると鼻の奥がつんとなって、眼球、が、熱くなった。なあ、、おれだっておんなじだったんだ、おまえと死ぬまで一緒にいたかったんだ。先になんて、死ぬなよ。

声が掠れて出ない。息だけが嫌味ったらしくひゅーひゅーと吸って、吐いて。この呼吸をこいつに分けてやりたかった。冷たい冷たい冷たい冷たい。雨が浸み込む。の体温はもう、ない。あえて言うならこの冷たさがおれに伝わってくる。これがの体温だと?笑わせんな、馬鹿。んなわけねえよ何かの手違いだろ。
そうだ手違いだ手違いだ だって本当は追われる身はおれだけだったはずだ。ますます冷えていくを見下ろして、唇を死ぬほど噛んだ。
どうしたっては死んだ。おれのせいだ。紛れもないおれのせいだ。自分勝手に巻き込んで好き勝手振り回した。おまえが笑ってくれたから、おれ、本当に安心して、まだ大丈夫なんだって、何度も救われたんだ。

滴る雨をぼんやりとした視界で眺めながら、どこで間違ったんだろうとか至極アホなことを考えていた。自分が手を握って寝なかったことだろうか、人傀儡になると宣告したことだろうか、あいつを抜け忍へ誘ったことだろうか。
全部間違えた気がする。

ああ、でも、

間違ってねえよ。おれはこいつをすきでこいつもおれをすきなんだ。どんな言い訳も並べてやるけどそれだけは事実だ。一緒にいたかったし嘘はつきたくないし隣にいたら安心しちまうし、すきだって気持ちだけでもういいんだそれで幸せやってたんだ。おれは間違えてねえよ大切なものが何なのか無くしてから気付くような奴じゃねえ最初から最後まで大切なものがわかってたそのために行動してきた。
守りきれなかったけど。
結局守れなかったんだそうだのうのうと寝て起きても雨で匂いは追えないし敵は逃がしちまうし、は死んじまうし。
知ってんのかオイ、死んだらもう会えねえって、知ってんのかよ馬鹿。目ェ覚ませ。

雨に混じってぼたりと水滴が落ちた。もう、泣くのなんて何年ぶりだろう。雨に混じって泣くのは初めてだ。この冷たさを忘れてやるもんか。今までの全部ひっくるめて背負ってやる。

背負ってやるさ。けど、二度と味わいたくない。


「…さよならだ……


虚しくなったから最後に強く抱きしめて、それから、もうどこまでもおれは。

強くなれるんならなんでもしてやるさ。この痛みから逃れられるんならどこまでだって堕ちてやる。もうこいつの冷たい体温を感じたくない。だから

感覚なんていらない。


、ほら、おれ、弱いだろ  なあ、笑ってくれよ」


( そうして一人になった )