目の前で一緒にたらこスパゲティを食しているはずのネジくんは、対峙すべきであるそれを華麗に無視しているようであまり食が進んでいないようである。代わりと言っては何だがわたしはお昼ご飯のそれをもりもり頬張っている。うまうま。対照的にネジくんの表情はどこか思い詰めていて、その理由を完璧に把握しているわたしとしては朝からずっとな彼のその態度は見飽きたもので、フォークを置いて水を飲んだ。


「ネジくん、君の心配もわかるけどたらこスパゲティの前でもそんな顔されると困るのだよ」
「なんでだ」
「たらスパはわたしの大好物である」
「ふん…それをわざわざ嫌う人の方が少数派だろ。そしておまえの大好物はこの間チーズケーキだと教えられたばかりだから信じない」
「くっそー」


ネジくんは前日の任務でやらかして足の骨を折ったらしい。同じ班の医療忍者の人が近くにいたおかげで大事にはならなかったのだけど、今日の任務には出られないということで急遽同じ日向一族のヒナタさんが埋め合わせで駆り出されることになったのだそうだ。その任務は白眼を必要とする内容なので仕方ないのだが、そこを割り切れないでもやもやしたまま自宅療養しているネジくんは些か滑稽である。わたしならめっちゃ喜んじゃうけどね、任務なくなったら。


「まあ今日の任務でヒナタさんに何かあったらおまえの責任かもね」
「…俺はのん気に飯を食ってる場合か」
「腹が減っては戦はできぬ」
「腹が減ってるのはおまえだけだ」
「ねえわたしが君を元気付けてあげてるのがわからないの?」
「やはりか…まさかとは思っていたが。あまりにも不可解すぎて」
「こんなにイライラするのはお腹が減ってるからだろうか」
「そうじゃないか?煮干しを摂取することを勧めるぞ」
「ネジくんには牛乳を摂取することを勧めるよ」


骨が弱いんだから。そう言えばまた先程と同じ顔をするのでいよいよつまらない。正直ネジくんの根に持つ性格はすきじゃないのだ。良く言えば責任感があるとでも表現するのだろうが昔の宗家と分家のなんちゃらや今回のヒナタさんに降りかかったとばっちりに申し訳ないと胃を潰すそれもどちらも同じフォルダに分類される。わたしからしたら。「ネジくんが何やっても変わらないフォルダ」である。もしかしてその重度の責任感の強さが木の葉の上忍には必要なのだろうか。だとしたらわたしは一生それにはなれないだろう。上忍で思い出したけどわたし今結構切羽詰まってるんだった。ネジくん宅に乗り込んでたらスパ作ってのん気に食ってる場合じゃないんだった。


「それより聞いてよネジくん」
「それより…?」
「来週中忍試験あるんだよ。どうすればいい?」
「今から何かをして結果が変わるわけではない。大切なのは普段の自分がどれだけ向上心を持って物事に取り組んでいるかだ」
「ネジくんがいうと間違っててもそれっぽく聞こえる」
「おまえに言った俺が馬鹿だった」


君に聞いたわたしが馬鹿だったと言い返してやろうかと思ったけどわたしが勝手にむかついただけなので感情に任せて発言してもすぐ反論されて丸め込まれて終わるだろう。ネジくんの方がわたしより何倍も頭がいいのだ。どこかで彼は天才と形容されていたけど確かにそんな雰囲気は醸しているけど天才にしては物足りないと感じる。少なくともわたしの目にはそう映る。いつまでもヒナタさんの身を案じている様子なんかを見てると特に。過保護とでも罵ってやればわたしの気は済むのだが生憎怪我人に塩塗る気分でもないのだ。でもむかつくよね。


「今から俺が行った方がいいのではないか」


ネジくんわたしそろそろ怒るよ。